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最高裁判所第一小法廷 昭和31年(オ)362号 判決 1960年9月15日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

しかし原審の認定したような状況の下において、仮に水利、地質等所論の事情があつたとしても、所論部落に所論準区域の指定をしなかつた農地委員会の措置を以て、農地委員会にまかされた裁量による判断を誤まつた違法あるものということはできない。

されば右と同趣旨の結論を示した原判決は結局正当であつて論旨は採るを得ない。

同第二点について。

しかし自創法施行規則四条が、所論決定書謄本を異議申立人に送付すべきことを定めたのは、主としてその決定のあつたことを申立人に知らしめ、申立人をしてこれに対してさらに訴願を提起する機会を与えんがためのものと解されるところ、原審の確定した事実関係によれば、上告人に対しては当時すでに異議却下の決定が成立していたことが明らかであり、上告人はその頃野崎村農地委員会からの通知によつて、これを知り、これに対してさらに訴願を提起し、該訴願は訴願庁において受理された上棄却の実体的裁決があつたことを明らかにし得るから、右施行規則四条の趣旨はすでに充たされたものというべく、したがつて、所論謄本の未送付の瑕疵は、本件買収処分の当然無効の原因となるものではなく、また取消事由ともならないものと解すべきである。それゆえ論旨は採るを得ない。

同第三点について。

しかし原審の認定するところによれば、本件買収令書は昭和二三年八月一四日付をもつて県知事から上告人に交付されたというのであり、かつ当時上告人は不在地主であつたというのであるから、本件買収処分は適法有効に成立したものというべく、したがつてその後上告人が町村合併のいわゆる在村の者となつたとしても、すでに適法有効に成立した買収処分の効力に消長をきたすべきいわれはない。されば原審の判断は正当として是認せらるべく、論旨は採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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